フィンランドの幼児教育は大きく3つのグループに分けられる。
一番周流なのが保育所で(päiväkoti)、続いて家庭的保育(perhepäivähoito)とオープン幼児教育(avoimen varhaiskasvatus)である。
フィンランドには「待機児童」という言葉はなく、希望すれば保育所に通うことができる。保護者の就労の有無にかかわらず、保育所を利用することができる。
フィンランドも以前は保育所やその他幼児教育の管轄は、日本でいう厚生労働省(Sosiaali- ja terveysministeriö)が担っていたが、現在はOpetus- ja kulttuuriministeriö という教育文化省が担っている。その中にある、Opetushallitus(教育委員会)が幼児教育指針を作成している。
フィンランドでは “保育所は働く保護者を支援する役割” という時代は終わっているように思える。現在は幼児教育そのものに重点を置いている。
日本では、「日本の幼稚園と保育所の違いって何だろう」と答える人が多い一方で、
フィンランドではきっと「え、フィンランドに幼稚園ってまだあるの?」と答えるでしょう。それくらい保育所(Päiväkoti)が浸透している。
フィンランドも以前は、幼稚園(lastentarhaまたは leikkikoulu)と呼ばれる機関が存在した。
オープン幼児教育(avoimen varhaiskasvatus )は、子育て支援サークルのようなもので、就学前の子どもを対象にしているが、実際は3歳以下の子どもたちが多い。
よくフィンランドの教育が取り上げられて日本の教育と比較されているが、
これらを比較する前に、両国間にある違いを把握しておく必要がある。
例えば、
・フィンランドの人口は約550万人(大阪の総人口より少ない)、日本の人口は約1億2700万人
・公用語はフィンランド語とスウェーデン語
・EUに属している
・食べ物等にかかる消費税は14%、そのほか物にかかる税は24%
・二重国籍が可能
・難民の受け入れ数が多い
・大学まで無償で通うことができる。(ただし、保育所は所得に応じて有料)
フィンランドの幼児教育法(Varhaiskasvatuslaki)に定義されている幼児教育の目的は、
1) edistää jokaisen lapsen iän ja kehityksen mukaista kokonaisvaltaista kasvua, kehitystä, terveyttä ja hyvinvointia;
それぞれの子どもの年齢や発達に応じて、包括的な成長、発達、健康、幸福の実現を促すこと
2) tukea lapsen oppimisen edellytyksiä ja edistää elinikäistä oppimista ja koulutuksellisen tasa-arvon toteuttamista
子どもの学びに必要な事柄を支援すること、生涯学習や教育の平等の実現を促すこと
3) toteuttaa lapsen leikkiin, liikkumiseen, taiteisiin ja kulttuuriperintöön perustuvaa monipuolista pedagogista toimintaa ja mahdollistaa myönteiset oppimiskokemukset;
子どもの遊び、運動、芸術や文化継承に基づく多面的で教育的な活動を実現すること、また、前向きな学びの経験となる機会を作ること
4) varmistaa kehittävä, oppimista edistävä, terveellinen ja turvallinen varhaiskasvatusympäristö;
幼児教育の環境が向上的で、学びを促進し、健康的で安全的であること
5) turvata lasta kunnioittava toimintatapa ja mahdollisimman pysyvät vuorovaikutussuhteet lasten ja varhaiskasvatushenkilöstön välillä;
尊重的な活動方法や、子どもと保育者の間における可能な限り持続性のある信頼関係によって子どもの情緒の安定を図ること
6) antaa kaikille lapsille yhdenvertaiset mahdollisuudet varhaiskasvatukseen, edistää sukupuolten tasa-arvoa sekä antaa valmiuksia ymmärtää ja kunnioittaa yleistä kulttuuriperinnettä sekä kunkin kielellistä, kulttuurista, uskonnollista ja katsomuksellista taustaa;
すべての子どもに幼児教育を受ける平等な機会を与えること、また男女平等を促すこと、一般的な文化継承、言語的、文化的、宗教的、信条的な背景を理解したり尊重したりする基盤を与えること
7) tunnistaa lapsen yksilöllisen tuen tarve ja järjestää tarkoituksenmukaista tukea varhaiskasvatuksessa tarpeen ilmettyä tarvittaessa monialaisessa yhteistyössä;
子どもの個々のニーズを把握し、幼児教育の中でそのニーズに応じた支援を、必要に応じて他機関との連携の中で構築すること
8) kehittää lapsen yhteistyö- ja vuorovaikutustaitoja, edistää lapsen toimimista vertaisryhmässä sekä ohjata eettisesti vastuulliseen ja kestävään toimintaan, toisten ihmisten kunnioittamiseen ja yhteiskunnan jäsenyyteen;
子どもの協調性やコミュニケーション力を伸ばし、集団の中での活動を促し、責任感のある持続的な活動や、相手を敬うこと、社会の一員であることへ倫理的に導くこと
9) varmistaa lapsen mahdollisuus osallistua ja saada vaikuttaa itseään koskeviin asioihin;
子どもが自分に関わる出来事へ影響を与えたり、参加する機会を確保すること
10) toimia yhdessä lapsen sekä lapsen vanhemman tai muun huoltajan kanssa lapsen tasapainoisen kehityksen ja kokonaisvaltaisen hyvinvoinnin parhaaksi sekä tukea lapsen vanhempaa tai muuta huoltajaa kasvatustyössä.
子どもや親またはそれにあたる保護者と共に平均的な発達、包括的な幸福において最善となるように活動すること、また、子どもの親またはそれにあたる保護者を保育の中で支援すること
この幼児教育法に定義されている10個の目的に沿って、フィンランドの幼児教育指導指針が作成されている。
保育所、家庭的保育、オープン幼児教育はすべてその指導指針を元に、それぞれの自治体がさらに市の幼児教育指導指針を作成している。
日本には、文部科学省作成の幼稚園教育要領と、厚生労働省作成の保育所保育指針があり、これらとフィンランドの幼児教育法の目的項目はそこまで相違はないように感じる。
なのに、なぜ日本とフィンランドで保育の中身が異なるのだろう。
コメント
コメントを投稿